来年度からすべての介護事業所にサービス内容などの公表が義務付けられるのを受け、厚生労働省は16日、情報の公表に必要な調査などの費用を、来年4月に改定される介護報酬に盛り込む方針を固めた。
公表を徹底し、利用者の選択に役立てるのが狙い。報酬額は審議会に諮って決定するが、事業所1か所あたり6万~10万円、来年度は約10万か所で総額60億~100億円程度となりそうだ。
介護情報の公表は、先月成立した改正介護保険法で義務付けられ、来年度から順次実施される。公表されるのは、職員体制や利用料金などの「基本情報項目」と、サービス向上への取り組みや職員研修などの「調査情報項目」の2種類。開示項目数は最大で約250に上る。
このうち、調査情報項目については、都道府県が2人一組の調査員を派遣して調査する。こうして第三者によって確認された情報を、事業所は毎年1回、パンフレットなどで利用者に提供。一方、都道府県も管内の全事業所を比較・一覧できるよう、毎年1回、インターネット上で公表する。
報酬には、本来なら事業所が全額負担する派遣調査員の人件費や、パンフレットの作成代などが盛り込まれる予定だ。介護保険財政が厳しい中、報酬に含めようとする背景には、利用者の苦情の増加がある。
事業所数は2001年4月の約8万か所から、現在では12万5000か所に増加。これに伴い、都道府県の国民健康保険団体連合会に寄せられる苦情の相談・申し立て受付件数も、00年度の3129件が、04年度には6548件に倍増した。
「苦情の声を上げない高齢者も相当数いるはずで、利用する前に十分な情報を得られる仕組みが必要。情報提供を徹底するには費用を捻出(ねんしゅつ)しにくい小規模事業所などに配慮する必要がある」と同省では説明する。
(2005年7月17日9時28分 読売新聞)