ひざを曲げた状態から力を入れて伸ばすレッグプレスをする千葉さん。上げる重りは50キロから80キロに増えた(札幌市健康づくりセンターで) 様々な専用の機器で筋力を鍛えるマシントレーニング。高齢者の利用が広がっているが、「元気な人が行う運動」と誤解されてはいないだろうか。 「足腰が弱り、外出が困難になった高齢者にこそ、マシンが向いているのです」。札幌市健康づくり事業団の総務課指導係長で、健康運動指導士の資格を持つ佐竹恵治さんはそう強調する。
市内に住む千葉雅子さん(71)は5年前、脳の血管が詰まる脳梗塞(こうそく)で入院、左半身にまひが残った。
伝い歩きをするほど足が不自由になった。頻繁に転び、布団の上に立っただけでバランスを崩して転倒。左腕も動かしにくく、料理も難しくなった。
2003年8月、同事業団が高齢者のために開く運動教室に参加した。1回の運動は、準備運動30分、座席に座った状態で足の筋力を鍛えるなどのマシントレーニング50分(下半身3種目、上半身1種目)、整理体操10分の計90分。3か月間で毎週2日、計24回のコースだ。
筋力トレーニングには、立った状態でひざを曲げ伸ばしするなど自分の体重を利用したり、ダンベルを使ったりする方法もある。しかし、千葉さんのように極端に足の筋力が弱っている場合、運動中に転倒する危険性も高くなる。
マシントレーニングの場合、座る、横になるなど安定した姿勢で運動でき、負荷も数キロ・グラム刻みで段階的に増やせる。安全性を保ちつつ、体の状態に適した負荷をかけることができるわけだ。
同事業団が、介護保険の要支援、要介護1、2のどれかに判定されている60歳以上の市民111人を、マシンで筋トレを行う場合と、マシンを使わない筋トレの場合に分けて調べた研究では、マシンを使った場合の方が、脚の筋力とバランス能力が上回っていた。
千葉さんは、運動を始めると徐々に転ぶ回数が減り、足が軽くなった。終了後も週1回はマシントレを続け、「要支援」だった介護保険の判定は、昨年5月に「自立」に。左腕も動きが良くなり、病気で断念していた大正琴の練習を、今年1月から再開した。
「まだ料理や靴を履くのに時間はかかるけど、自分の力で何でもできることが、すごくうれしい」
高齢者の筋力向上へのマシントレの有効性は、国内外の研究ではっきりしている。ただ、マシンが設置された施設は限られ、通うのに苦労する。
佐竹さんは「理学療法士や運動指導の専門家が、体の状態をきちんと評価し、もともとある痛みなどに注意しながら、適切な方法を指導することが大切」と指摘している。
筋トレの注意点 運動後に感じる筋肉の疲労感は、筋肉が成長するうえで必要だが、「関節が曲げにくくなったり、痛みが30分以上続いたりすれば、運動量かやり方に問題がある」(東京都老人総合研究所介護予防緊急対策室長の大渕修一さん)。主治医に相談し、専門家の指導を受けたい。
(2006年3月16日 読売新聞)